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森田 俊の部分的に真であり、部分的に偽

モノゴトは六面体。当たり前に見えるモノ。少し視点をずらすと見えるモノ。背景を探すと見えるモノに俯瞰すると見えるモノ。そして、絶対に見えないモノ。

【書評】進化論は科学か、あるいは単なる解釈に過ぎないのか

我々は誰しも自由な意思を持ち、人を好きになるのも嫌いになるのも自分の意思だと思っている。では、人を好きになるという感情が、実は遺伝子に影響を受けていると言われるとどう思うだろうか?

 

中南米に住むチスイコウモリは、体重40~50グラムしかないが食欲旺盛で、一晩で最大で自分の体重の40%に相当する血を吸う。しかも、60時間、餌にありつけない場合は餓死してしまう。

夜の採食が終わり洞窟に帰ってきた個体の中には、満足に血を吸えなかったコウモリも混ざっており、かれらは満腹の固体に餌ねだりの行為を行い、ねだられた固体は血を吐き戻してやるという。

 

これは進化論的には「利他的な互恵取引」というが、いつ自分が飢えた立場になるかもしれないため、自己犠牲をしてでも他人を助けることに合意的な理由があるのだ。

 

人間社会にも互恵取引の事例には事欠かない。大学の講義で代返してもらったり、昼食代を忘れたときにお金を貸してもらったり。ただし、世の中には裏切り者が存在する。彼らはもらうけど、与えない(もしくはごまかす)人だ。

 

いつも裏切れてばかりでは、固体として不利になってしまうため、なんとかして裏切り者は排除しなければならない。しかし、ここで問題なのは、現実の人間の互恵取引は何百回と繰りかえされるため、一見、不公正に見えたとしても偶然によるものなのか、あるいはごまかされているのかがわかり難いことだ。

 

となると、毎回、相手の関係を査定する何らかの心理メカニズムを備えた固体が有利になる。つまり、毎回、色々な相手との取引を個別にきちんと正確に記憶し、つねに利益/コスト比が最大になるように計算することだ。

 

しかし、これは現実に実施するとなると非常にコストがかかる。人間関係の貸し借りを全て家計簿のように記録することは現実的ではない。ではいったいどうすれば良いのだろうか?

 

じつは、このような不安定な互恵取引を大雑把に計算して、有利/不利を一瞬で判断するメカニズムがある。これが「感情システム」だ。友情や好き嫌いといった感情により利他的行動を行うかどうかを決定することで、裏切り者を排除することが可能となる。いつだって、人間の右脳的な直感は、左脳的なロジカルシンキングより効率が良いのだ。(ただし、正しかった場合のみだが)

 

つまるところ、好きだから助けるのではなく、固体が有利になるが故に他人を助ける(利他的行動を行う)のであり、その過程として効率が良い「友情・好き・嫌い・感謝・同情・罪悪感」といった感情システムが進化してきたって話。

  

 

進化と人間行動

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